居心地最高!注文住宅に「ヌック」を作って家族のお気に入りスペースになった実例

「そんなスペース、本当に使う?」と夫に鼻で笑われた、2畳の小さな隠れ家

総社市で新築注文住宅のインスタを夜な夜なスクロールしていたとき、私の目に飛び込んできたのが「ヌック(nook)」という言葉でした。海外の住宅にあるような、こぢんまりとした、隠れ家みたいな居心地のいい小空間。「絶対に新居に作りたい!」と興奮気味に夫に見せたところ、返ってきたのは実にあっさりとした一言でした。

「それ、ただのデッドスペースにならない? 普通にソファを大きくした方が広く使えるよ」

確かにその意見も一理あります。限られた坪数(予算の器)のなかで、わざわざ独立した部屋でもない、使い道の曖昧な2畳ほどの空間をねじ込むのは、ハード面での冒険でした。何に使うか決まっていない中途半端なスペースを作ってしまい、結局は誰も寄り付かない「無駄な余白」になったらどうしよう……と、プランニング中の私は冷や汗交じりの不安を抱えていたのも事実です。

でも、実際に設計図面の段階から徹底的にこだわり、形にしてから3年が経った今、我が家で一番「作ってよかった!」と断言できるのが、この小さなヌックです。リビングに大きなソファをドンと置くだけでは決して生まれなかった、家族それぞれの新しい時間のタイムラインが、この場所を拠点に回り始めました。今回は、夫の反対を押し切って私が図面に滑り込ませた、本物の居心地を手に入れるためのヌック計画を実体験ベースでお話しします。

解放感の裏に潜む「落ち着かなさ」を救ってくれた、リビング横の小さなくぼみ

我が家は、1階のLDKを仕切りのない大きなワンルームにしました。遮る壁が一切なく、視線が突き抜ける広々とした空間は本当に気持ちがいいのですが、暮らし始めて数ヶ月が経った頃、ある「不条理」に気づいたんです。それは、家の中に『一人で引きこもれる、おこもり感のある居場所』がどこにもないことでした。

家族と同じ空間にはいたいけれど、少しだけ自分の世界に没頭したいとき。たとえば、スマホで静かに漫画を読んだり、読書に集中したりしたいとき、22帖の大空間リビングはどこに座っても視線が通り過ぎて、どうにも気持ちが落ち着きません。だからといって、わざわざ2階の個室に上がってドアを閉めてしまうと、家族から完全に孤立してしまって寂しい……。この微妙なストレスの泥沼から我が家を救い出してくれたのが、基本設計の段階でテレビ面の裏に先回りして仕込んでおいた、アーチ壁のヌックでした。

広さはわずか1.5畳。あらかじめ床をリビングから30センチほど高くした「小上がり」の構造にし、座面のファブリックの下はすべて引き出し収納にするよう、図面上で指定しておきました。この床の高さを仕分けたデザインが、本当に魔法のようでした。リビングのソファに座っている夫からは、ヌックにいる私の姿が絶妙に死角になって見えません。でも、お互いの気配やテレビの音は優しく伝わってくる。この「同じ空間にいながら、完全に守られている」という独特のおこもり感に、私だけでなく、最初はあれほど反対していた夫も、学校から帰ってきた子どもたちも、一瞬で虜になってしまいました。今では、家族の中で一番人気の「特等席」を奪い合う毎日です。

ただの「物置き場」にしないために、私が図面打ち合わせで徹底した3つの仕様

ヌックは、ただ壁を凹ませてベンチを置くだけでは、すぐに荷物や脱ぎっぱなしの上着に占領されて窒息してしまいます。私が「機能美のあるおこもり空間」をキープするために、着工前の打ち合わせで設計士さんに細かくリクエストした工夫がこちらです。

■ 天井をあえて「下げる」という引き算の視覚マジック
リビングの天井高は2.4メートルありますが、ヌックのエリアだけは天井を2.1メートルまでグッと下げました。さらに、入り口を緩やかなアール(弓型)の垂れ壁にしています。この「天井の低さ」と「囲まれ感」があるからこそ、中に入った瞬間に脳がホッとする隠れ家のような感覚が生まれるよう、ミリ単位で寸法を計算してもらいました。

■ コンセントの位置と、専用の「おもり照明」
ヌックの中でスマホを充電しながらゴロゴロしたり、タブレットで動画を見たりできるように、足元には多めにコンセントを先回り設計で配置しました。また、天井には全体の明るいダウンライトではなく、手元だけを優しく照らす小さなペンダントライトを1灯だけ設置。これが、夜になると抜群の雰囲気を醸し出してくれます。

■ 「ハイドア」の逆をいく、あえて見せないディフェンス
最近の注文住宅は開放感を出すために天井まで届くハイドアが主流ですが、ヌックに関しては逆です。リビングから中が丸見えにならないよう、あえて「カニ歩き」でスッと入り込むような、少し奥まった位置に入り口を配置しました。このちょっとしたゾーニングの工夫のおかげで、急な来客があってもヌックの中のゴチャつきが一切視界に入らず、リビングのすっきり感を守ることができています。

四角い部屋のスペックを満たすより、心の拠り所になる「1畳の余白」を

注文住宅の間取り図を眺めていると、私たちはどうしても「LDKは何帖」「収納は何平米」という、四角い箱の数字を増やすことばかりに目を奪われがちです。でも、実際に新しい家で何年も暮らしてみて思うのは、暮らしの質を上げてくれるのは、図面上の広さではなく、自分の心が一番リラックスできる「お気に入りの居場所」が家の中にいくつあるか、ということです。

20坪や30坪といった家全体のサイズに関係なく、階段の下のデッドスペースや、窓際のほんのわずかなくぼみを利用するだけで、ヌックはいくらでも作れます。個室を作るほどの贅沢な予算の器がなくても、壁の引き算と少しの知恵があれば、家族全員が自然と集まり、それぞれが好きな時間を過ごせる最高のパワースポットが誕生します。

カタログの標準プランに自分たちの暮らしを無理やり当てはめるのは、もう終わりにしましょう。あなたのご家族が、お休みの日にどんな体勢で、どんな風に一人の時間を楽しみたいか。そのリアルなソフト面を想像しながら、間取りの中にそっと小さなくぼみを仕込んでみてください。何年経っても飽きない、我が家だけの愛おしい秘密基地が完成するはずです。”